アルミ材へのめっき
PLATING ON ALUMINIUM
アルミニウムの特性

アルミニウム(英語名:aluminum,元素記号:Al)は常温常圧でよい熱伝導性、電気伝導性を持ち、加工性がよく、酸化されやすいために高い耐食性をもつ軽量な金属であり、一円玉、アルミサッシや構造材やヒートシンク等、広く用いられています。
アルミ材へのめっきとは
アルミの電気伝導性の良さと軽量であること、空気中で緻密で安定な酸化被膜を生成することによる耐食性の高さに着目され、エレクトロニクス、エネルギー分野で導電材としての採用が始まっています。
一方で、酸化被膜は表面へ何らかの加工を施す場合、加工性を悪化させている一因となります。例えば、導電材として使用する場合には接触電気抵抗を上昇させる要因となり、接合部が発熱し、電気的なロスが大きくなってしまいます。
そのため長らく“難めっき材”と言われており不安定で密着性の乏しかったアルミ材へのめっきですが、現在では確実で安定したプロセスが開発されており、表面への加工における課題をめっきで解決することができます。
アルミ材のめっきプロセス

加工するアルミ材に付着している工作油や汚れなどを取る工程です。
②エッチング
加工するアルミ材には酸化被膜が形成されています。アルミ材へめっきをしていく際に、酸化被膜の存在はめっきの密着性へ大きく影響します。そのため、アルカリ性の処理液を用いて酸化被膜を除去します。
③スマット除去(デスマット)
エッチングにより、アルミ材の中にあるさまざまな介在物(スマット)が表面へ出てきます。その介在物(スマット)があることでめっきの密着性が悪くなるため、除去を行います。
④ジンケート処理
アルミ材へめっきをする際にキーポイントとなる工程で、置換反応によりアルミ材を溶解しながら、表面に亜鉛を析出する工程です。亜鉛を置換させることにより、アルミ材の酸化被膜形成を防ぐことができます。
ニシハラ理工では、1度ジンケート処理を行った皮膜を、薬品で剥離を行った後もう一度ジンケート処理を行うダブルジンケート法を採用しています。この方法を行うことで薄く密着性の良好な被膜が形成できます。
⑤めっき加工
ジンケート処理で形成した薄く密着性の良い被膜へ、ニシハラ理工では電気めっきを行っています。
対応可能めっき仕様はNiめっき仕上げ、Niめっき下地のSnめっき仕上げになります。詳しくは対応可能仕様を参照してください。
アルミ材へのめっきで得られる主な機能
- POINT1
- 接触電気抵抗の低減
- POINT2
- はんだ付け性の付与
- POINT3
- 抵抗溶接の作業性向上
POINT1 接触電気抵抗の低減
アルミの酸化被膜は電気を通しにくい性質があり、導電材料としては用途が限られます。
アルミの電気伝導率は銅の約60%と劣りますが、比重は約30%と軽量なので、同じ重さの銅に比べて2倍の電流を通すことができ、導電体としては極めて経済的な金属です。
項目 | アルミニウム | 銅 |
比重[g/㎤] | 2.7 | 8.9 |
導電率[%IACS] | 64.9 | 100 |
この経済性を活用するため、アルミ材の酸化被膜を除去した後、酸化被膜が生成される前に電気抵抗が上昇しにくい金属をめっきします。
アルミへのめっきは接触電気抵抗値を抑制し、軽量な導電材としての活用を可能にします。

加重0.5Nのときの接触電気抵抗値を比較すると87.5%の抑制効果があります。

バスバーのように電気を大量に流しつつ、ボルト締結をする部材にはめっき付きのアルミ材が適しています。ニシハラ理工では電気接点用に独自開発したN-Niめっきを推奨しております。
詳しくはN-Niめっきによる課題解決事例を参照してください。
POINT2 はんだ付け性の付与
アルミは酸化されやすく、はんだをはじいてしまいます。一般的には、はんだ付け性の付与のために、フラックスを使用する場合がありますが、強酸性のものが多く、フラックスがアルミ材を侵す恐れがあります。
また、フラックスを使用した場合は、はんだ付け後に洗浄工程を設ける必要があり、環境への影響、作業者への負担が懸念されます。
アルミは電解腐食を起こしやすい金属であるため、直接はんだづけすると局部電池を形成し、はんだ付け部が劣化しやすい状況となります。
予備はんだめっきとして長い採用実績のある、Ni+Snめっきによる表面改質でアルミ材へのはんだ付けが可能です。

POINT3 抵抗溶接の作業性向上
抵抗溶接を用いてアルミ材を溶接する際、溶接機の電極へアルミが付着し、電気抵抗の上昇によって溶接強度が低下してしまうので、電極の研磨頻度を上げる必要があり、作業効率が悪化します。
アルミ材にNi+Snめっきをすることで電極へアルミ付着を抑制し、工程の効率化が可能となります。
ニシハラ理工の「アルミ材へのフープめっき」が選ばれる理由
車載用部品を構成するめっき材料には高品質かつ安定的な供給が求められており、自動車の燃費、走行距離の改善要望を背景として、軽量化を目的に銅からめっき済アルミ材への切り替え需要が拡大しています。
これらの声に応えるためには、量産技術と品質保証の両方が必要となり、ニシハラ理工のアルミ材へのフープめっきは高品質かつ安定的な供給を実現しています。
- POINT1
- 安価で安定した品質
- POINT2
- 適正タイミングでの適正量納品
- POINT3
- 素材特性と皮膜特性の“いいとこ取り”
POINT1 安価で安定した品質
フープめっきは、成形後の部品ひとつひとつをめっきする工法と比較して、めっき加工に必要な工程を一貫で加工できるため、生産性が高く、品質のバラつきを抑制できます。
前述の”アルミ材へめっきすることで得られる機能”を、安定した品質かつ適正な価格で提供できます。
POINT2 適正タイミングでの適正量納品

車載向け部品の需要増に伴って、めっき付き部材を適正タイミングに適正量納品できない、生産キャパシティが不足して供給できなくなることが考えられます。
後工程で実際に使用する幅より広い幅で、フープめっきした材料をスリット加工すると、高品質なめっき材料を適正量・適正価格で安定供給することができます。
POINT3 素材特性と皮膜特性の“いいとこ取り”
「めっきが付いていると後工程で不具合につながる箇所が存在する」、「めっきの特性が必要な箇所と基材の特性が必要な箇所がある」等、部品設計上、1つの部材でめっきの部分とアルミ素地の部分が必要になるケースがあります。
部分めっきでこの課題を解決することができます。ニシハラ理工ではアルミ材へのフープめっきでも部分めっきの対応をしていますので、品質の安定化とあわせて部品の製造プロセスを最適化します。
アルミ材めっきに適した製品
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用途 | 推奨めっき 仕様 |
効果 | |||
軽量化 | 接触電気抵抗 | はんだ付け性 | 溶接性 | ||
車載向け電子部品全般 | N-Ni+Sn | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
ICパッケージ | N-Ni+Sn | 〇 | 〇 | 〇 | |
ヒートシンク、ヒートスプレッダ | N-Ni+Sn | 〇 | 〇 | 〇 | |
LED | N-Ni+Sn | 〇 | |||
2次電池 | N-Ni | 〇 | 〇 | ||
バスバー | N-Ni | 〇 | 〇 |
対応可能仕様
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仕上めっき | 下地めっき | 板厚[㎜] | 板幅[㎜] | |||
材質 | 種類 | 最大膜厚 [μm] | 種類 | 最大膜厚 [μm] | ||
A1000系,A3000系, A5000系,A6000系 | 錫 | 5 | ニッケル | 2 | 0.05~2.3 | 10~250 |
ニッケル | 4 | - | - |
関連リンク

フープめっきは安価で安定した品質を提供できます。
N-Niは長期信頼性を求められる導電部品に最適な製品技術を実現させます。

めっきエリアのコントロールで、電子部品製造プロセスを最適化します。

広幅化+スリット加工で、高品質なめっき材料を適正量・適正価格で安定供給できます。