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第3回 集電体とは?

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第3回 集電体とは?

私達の日々の生活を縁の下の力持ちとして支えてくれる電池

 私たちの暮らしの中を見回すと様々な電池が活躍しております。現代において欠かすことが出来ない生活必需品となった、スマートフォン、ノートパソコンなど小型・軽量化で長時間使用できるモバイル・ポータブル機器にはリチウムイオン電池が内蔵されております。
そして今日、地球温暖化対策の一環として二酸化炭素(CO2)排出削減の要請から、自動車への電池搭載が加速されております。
ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(EV)にはリチウムイオン電池などが動力源として使われ、車文明を支える主体がガソリン車から電気へ徐々に移行しつつあります。

1.集電体とは?
 電池を構成する部材は大きく4つに分けられており、正極、負極、電解液、セパレーターから構成されています。集電体とは、電池の正・負電極と外部回路の間で電子を効率的に伝導させる役割を持つ重要な部材です。電池の性能向上に不可欠であり、素材や表面処理の種類によって電池の特性が大きく左右されます。

2.電池集電体の役割と必要性
 電池集電体の主な役割は以下の通りです。
  ・電子の伝導性向上:電極内で生成された電子をスムーズに移動させる。
  ・電極の機械的強度の確保:電極を支える基材として機能する。
  ・化学反応の均一化:電極全体で均一な反応を促進し、電池の効率を向上させる。
  ・耐食性の向上:電解液との反応を抑え、長寿命化を実現する。

3.電池集電体の種類
 電池集電体には、使用する電池の種類や目的に応じてさまざまな材料が採用されます。

3-1. 銅箔(負極用集電体)
 リチウムイオン電池の負極集電体として主に使用されるのが銅箔です。
  ・高い電気伝導性:電子の移動を効率化。
  ・化学的安定性:負極のリチウムとの反応を抑制。
  ・高い機械的強度:薄型化しても安定した構造を維持。

3-2. アルミ箔(正極用集電体)
 リチウムイオン電池の正極集電体にはアルミ箔が使用されます。
  ・軽量で耐食性が高い:酸化による劣化を防ぐ。
  ・高い電圧安定性:正極材料との相性が良い。

3-3. ステンレス(次世代電池向け)
 次世代電池では、新たな集電体材料が検討されています。
  ・ステンレス:耐熱性が高く、材料強度が高い。

4.今後電池が活用される分野と次世代電池へのニーズ

4-1. 電気自動車(EV
 各国が環境対応車の普及を進める中で、バッテリーに対する高性能化・低コスト化要求が高まっております。航続距離延長を目的としたバッテリーの高容量密度化、急速充電を達成するためのレート特性改善、車体寿命並みの長寿命化など電池性能の全般的な性能改善が求められております。

4-2. 再生可能エネルギー貯蔵
 温室効果ガスの排出削減に向けて各国が再生可能エネルギーの導入を図っております。再生可能エネルギーを活用した大規模発電施設では、エネルギーの需給調整を行う上で、入出力特性・安全性に優れた蓄電デバイスが求められております。

4-3. IoT普及を目的とした小容量・長寿命の電池需要増加
 Iotを活用したセンサーネットワークの構築が図られております。状態監視を目的にFA、インフラ、物流など環境変化の大きい場所への搭載が予想されており、安全性・長期信頼性・小型・フレキシブルなどの特性が求められております。

4-4. 医療・
ウェアラブルデバイスなど特殊な環境下での電池利用
 医療分野では、患者のモニタリング、遠隔治療、健康管理を目的にするバイタルセンサーの導入が進展します。さらに過酷な環境下(高温、低温地域、宇宙領域)での電子機器利用を可能にするために、電池の耐久性・長寿命化に対する要求が高まっております。

5.まとめ

 今後、電池においては、安全性・高性能化・小型化・軽量化・レアメタルフリーなどが求めらており、その開発競争も激化しております。
電池集電体は、電池の性能を決定づける重要な要素であり、素材や表面処理によって特性が大きく変わります。リチウムイオン電池では銅箔やアルミ箔が主流ですが、次世代電池向けには新素材も開発されています。
弊社におきましては、金属箔材への表面処理加工をし、素材金属箔にない機能性や機械的強度を付与し、電池製造工程のボトルネックになっている部分に関して訴求して参ります。

金属箔への課題解決事例はこちら

参考文献
「電池」で負ければ日本は終わる-新エネルギー革命の時代 岸 宣仁【著】早川書房

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