はじめに|銅からアルミへ置換を検討する際に浮かびやすい疑問
車載部品の設計に関するご相談を受ける中で、設計段階で特に多いのが「銅からアルミに置き換えたいが、本当に成立するのか分からない」という声です。アルミの価格高騰が話題になる一方で、銅も同様に価格変動が続いており、材料コストだけで是非を判断することが、以前より難しくなってきています。
それでもなお、銅からアルミへ置換の検討が続いている背景には、軽量化や部品点数削減、電動化対応といった設計上の優位性があります。一方で、実際に置換を進めようとすると、「導電性は大丈夫か」「接合や量産で問題が出ないか」といった不安が次々に出てきます。
本記事では、表面処理・めっきを扱う立場から、車載部品の材料置換(銅からアルミへ)において、設計段階でつまずきやすいポイントを整理し、失敗を避けるための考え方を共有します。
銅とアルミは「同じ金属」ではないという前提
銅とアルミはいずれも金属材料ですが、設計や製造の現場では性質の違いがそのまま課題として現れます。
・比重 :アルミは銅の約1/3と軽量
・導電率:銅の方が高いが、実部品では断面設計や表面状態の影響が大きい
・機械特性:アルミは柔らかく、変形やキズが発生しやすい
・表面状態:アルミは酸化皮膜を形成しやすい
設計段階でよく見られるのが、銅部品と同じ寸法・同じ構造でアルミに置き換えようとするケースです。この考え方のまま進めてしまうと、後工程でさまざまな問題が表面化します。
軽量化を優先しすぎると起きやすい問題
アルミ置換の目的として最も分かりやすいのが軽量化ですが、設計段階で軽量化だけを強く意識すると、次のような課題につながることがあります。
・剛性不足による変形や共振
・断面拡大によるスペース制約
・接触部の面圧不足
めっきや表面処理の観点では、接触条件が十分に整理されていない設計の場合、導通不良や経時変化といった課題につながる可能性があるため、設計段階での追加検討が必要になるケースがあります。
軽量化は重要ですが、他の要求特性とのバランスを前提に考える必要があります。
導電性の問題は「材料」より「接触部」で考える
銅→アルミ置換を検討する際、導電性は必ず議論になります。材料データ上では銅が有利に見えますが、実際の車載部品では、電気特性に影響するのは材料そのものよりも、接触部の状態や構造であることが多いのが実情です。
設計段階でよく検討テーマになるのが、
・接触面の構造や面圧が十分に確保できているか
・使用環境や経時変化を踏まえた設計になっているか
・表面状態を前提とした電気特性評価ができているか
といった点です。アルミ材は表面特性の扱いが重要な材料であるため、材料選定と同時に、表面処理を含めた接触設計をセットで考えることが、安定した導電性を検討する上での前提になります。
めっきや前処理は、アルミ材の特性を活かすための一つの技術要素であり、設計段階でその前提条件を共有しておくことで、後工程での検討が進めやすくなります。
接合・実装方法は後回しにしない
設計初期では材料選定に目が向きがちですが、実際には接合・実装方法でつまずくケースも多く見られます。
・はんだ付けが想定通りにいかない
・溶接条件がシビアになる
・異種金属接触による腐食が懸念される
これらは、材料をアルミに置き換えた時点で発生しやすい課題です。設計段階から、どのように接合し、どの工程で量産するかまで含めて考えておくことで、後戻りを減らすことができます。
量産段階で検討しておきたいポイント
試作評価では問題が見えなくても、量産に移行した際に想定外の調整が必要になるケースは少なくありません。これは特定の加工不良を前提とした話ではなく、設計と量産条件の前提が十分に共有されていないことで起こるケースが多い印象です。
めっき・表面処理の観点では、
・部品形状や公差が量産工程を前提に整理されているか
・搬送・治具条件を含めた形状設計になっているか
・要求特性(導電性・外観・信頼性)が工程条件として具体化されているか
といった点を、設計段階で一度整理しておくことが重要になります。量産段階での安定性は、加工品質そのものというよりも、事前のすり合わせの有無に左右されることが多いためです。
銅からアルミへ置換を検討する際の考え方
ここまでの内容を踏まえると、銅→アルミ置換を進める際に重要なのは、次のような視点です。
・材料単価だけで判断しない
・銅と同じ設計を前提にしない
・表面処理・接合・量産まで含めて考える
・設計段階で「困りそうな点」を先に洗い出す
表面処理やめっきの観点では、設計初期でのすり合わせが、その後の安定性を大きく左右します。
おわりに|設計段階での情報共有が重要になる理由
車載部品の材料置換(銅からアルミへ)は、単純なコスト比較だけで結論が出るテーマではありません。設計が進むにつれて、導電性、接合方法、量産条件など、検討すべき要素が段階的に増えていきます。
めっき・表面処理の立場から見ると、設計初期にどこまで前提条件や要求を共有できているかが、その後の技術検討や条件整理の進め方を、大きく左右します。材料置換を検討する際は、設計・材料・表面処理・量産を切り分けず、一連の流れとして整理していくことが、結果的に手戻りを減らすことにつながります。
ニシハラ理工では、こうした材料置換に関する検討について、表面処理・めっきの観点から設計段階からの技術整理に関わることを得意としています。

