
アルミは軽量化に有効な材料として、近年では高電流用途(EV用バスバー、蓄電池部品、電源接続部品など)でも採用が進んでいます。一方で、実際に適用検討を進めると、接触抵抗や接合性など、導電性だけでは見えない課題に直面するケースもあります。
「導電性は問題ないはずなのに、接合が安定しない」というケースは、実際の現場でも珍しくありません。特にアルミ材では、はんだ付けや溶接工程で条件が不安定になりやすく、試作では問題なく見えても、量産移行後に不良が増えるケースもあります。
そこで今回は、アルミ材で起こりやすい接合トラブルと、その背景についてご紹介します。
※アルミの導電性については以下も参照してください。
>>関連記事:アルミの導電性とは
目次
なぜアルミ材にはんだは付きにくいの?
アルミ材では、表面に形成される酸化皮膜(酸化アルミニウム)が大きなポイントになります。この酸化皮膜は非常に安定しており、耐食性を高める一方で、接合工程では問題になることがあります。例えば、はんだ付けでは「濡れ性」が重要になりますが、酸化皮膜が存在すると、はんだが母材へなじみにくくなります。
その結果、接合工程では以下のような課題が発生することがあります。
・はんだが弾かれる
・一見接合できているように見えても接合強度が不足する
・接触抵抗が高くなる
・経時変化で状態が不安定になる
実際には「全く付かない」というよりも、“安定した接合条件を作りにくい”という表現の方が近いかもしれません。
アルミ材では、表面の酸化皮膜が接合へ影響しやすいため、接合方法や前処理条件に応じた検討が重要になります。
試作と量産で結果が変わる理由
アルミ材の接合では、試作と量産で結果が変わることがあります。
例えば、試作では問題なく接合できていたにもかかわらず、量産移行後に接合不良が増えるケースもあります。
その理由の一つが、表面状態の変化です。アルミ材は空気中でも酸化皮膜が形成されるため、保管環境や時間経過によって接合性が変化する場合があります。また、量産では材料ロット差や表面粗さの違いなど、試作時には見えにくかった条件差も発生します。さらに、搬送時の接触や温湿度変化など、細かな要因が積み重なることで、接合状態が不安定になるケースもあります。特に高電流用途では、わずかな接触抵抗上昇でも発熱や信頼性低下につながるため注意が必要です。
接合条件そのものに問題がなくても、材料の保管状態や表面状態の違いが結果へ影響するケースがあります。
アルミ材では、このような前工程側の管理も量産安定化の重要な要素になります。
実は「材料変更」が接合へ影響することもある
実際には、材料メーカー変更によって接合状態が変化するケースもあります。
一見すると同じアルミ材でも、材料メーカーによって表面状態や製造方法が異なる場合があります。また、使用されている加工油の違いによって、めっき前処理条件や最終的なはんだ濡れ性へ影響するケースもあります。そのため、量産では「材料は同じだから問題ない」とは言い切れません。
実際の現場では、材料メーカーへ訪問し、加工油や表面状態を確認しながら条件検討を行うケースもあります。
同じアルミ材でも条件をそのまま横展開できるとは限らず、材料メーカーごとに前処理条件を見直すケースもあります。このあたりは、実際に量産へ入って初めて気付くことも少なくありません。
はんだ付け以外でも接合トラブルは起こる
アルミ材の接合課題は、はんだ付けだけに限りません。
接合方法によっても、以下のような課題が発生することがあります。
抵抗溶接
・接触抵抗ばらつきによって発熱量が変化する
・溶接条件が不安定になりやすい
・電極消耗が早くなるケースがある
レーザー溶接
・表面状態によってレーザー吸収状態が変化する
・条件出しがシビアになりやすい
・表面酸化状態によって品質がばらつく場合がある
ボンディング工程
・酸化皮膜の影響を受けやすい
・表面状態によって接合強度が変化する
・長期信頼性へ影響するケースがある
このように、アルミ材では「接合できるか」だけではなく、どの接合方法でも安定して量産できるか、という視点が重要になります。
そのため、実際の現場では、接合方法に合わせて表面処理や前処理条件を調整するケースもあります。
※密着不良の原因については以下も参照してください。
>>関連記事:めっき密着不良の原因とは
接合不良を防ぐために重要な「表面処理」
アルミ材では、接合条件だけでなく、接合前の表面状態が結果を大きく左右します。
例えば、同じ接合条件でも、材料表面の状態によっては接合強度や接触抵抗に差が生じることがあります。そのため、接合工程だけで対策しようとするのではなく、前工程で表面状態を整える手段として表面処理が検討されるケースがあります。適切な表面処理を行うことで、接合性や接触抵抗の安定化につながる場合もあります。
特に量産では、後工程だけでなく前工程も含めた全体最適の視点が重要になります。
アルミ材は「接合まで含めた設計」が重要
アルミ材では、導電性や強度だけで材料選定を行うと、後工程で思わぬ課題が発生することがあります。
特に、はんだ付け・抵抗溶接・レーザー溶接・ボンディングなどの接合工程では、表面状態や酸化皮膜の影響を受けやすく、設計段階から接合方法まで含めて検討することが重要です。軽量化や材料置換のメリットを十分に活かすためには、「接合できるか」だけではなく、「量産で安定して接合できるか」という視点も欠かせません。
ニシハラ理工では、アルミ材への表面処理を通じて、はんだ付け性や接触抵抗、量産時の接合安定化に関する検討を行っています。はんだ付け性や接触抵抗、量産性などでお困りの際は、お気軽にご相談ください。
アルミ材への表面処理・接合性改善をご検討の方へ
ニシハラ理工では、アルミ材へのめっきにおいて、接触抵抗低減やはんだ付け性改善、抵抗溶接時の通電安定化など、後工程を見据えた表面処理検討を行っています。
また、フープ連続めっきによる量産対応も行っており、試作段階だけでなく量産移行まで含めたご相談にも対応しています。
「試作では問題なかったのに、量産で不良が増えた」こうしたケースでは、材料だけではなく、表面処理や後工程条件まで含めて確認が必要になる場合があります。
アルミ材の接合性や量産安定性でお困りの際は、お気軽にご相談ください。



